成年後見の申立ては、制度の選択よりも先に「情報の欠落」によって止まりやすい。
MSWの実務では、本人情報・医療情報・生活状況・財産状況・支援体制を、申立て用に再構成し、関係機関連携を同時に進めることが要点となる。
目次
対象と前提
- 対象は、医療・退院支援・施設入所支援等の場面で、成年後見の申立て関与が必要となるMSWである。
- 申立ては「判断能力の程度」だけでなく、「具体的な必要性(何の法律行為が必要か)」と「運用体制(担い手・連携先)」が揃わないと進まない。
- 親族が不在・希薄・対立しているケースでは、市区町村長申立てや専門職後見人選任が現実的な分岐となりやすい。
結論
申立てに向けてMSWが押さえる要点は次の3点である。
- 申立ての「理由」を、具体的な法律行為の必要性として言語化する(退院・入所契約・費用支払・口座手続き等)。
- 申立てに必要な情報を、家庭裁判所提出に耐える粒度で整流化する(本人・医療・生活・財産・親族/支援者)。
- 関係機関連携を「役割分担表」に落とし、申立て前後で止まりやすい工程(担い手不在、費用、住まい確保)を先に塞ぐ。
理由(法の論理)
- 法定後見は、判断能力低下後の保護制度であり、家庭裁判所は類型(後見・保佐・補助)と後見人等を、提出資料と必要性から決定する。
- 実務上、申立て動機として重視されやすいのは「本人ができないために、具体の法律行為が遂行不能になっている」ことである。
- 本人の生活課題(退院困難、入所困難、未払い、財産散逸)を、制度上の要件に接続するには、情報整理と関係機関の役割分担が不可欠となる。
手順/フロー
- 申立てのトリガー(必要性)を確定する
- 何が止まっているかを、法律行為の単位で整理する。
- 退院調整:入所契約、保証、費用支払、医療・介護契約
- 財産:預貯金の払戻し・解約、年金受領、支払の継続、滞納解消
- 住まい:賃貸更新、退去・処分、施設入所に伴う住居整理
- 「困っている」ではなく、「どの手続きが、本人の判断能力不足で遂行不能か」に置き換える。
- 何が止まっているかを、法律行為の単位で整理する。
- 申立て情報を5ブロックで収集・整流化する
- 本人基本情報
- 氏名、生年月日、住所、連絡先、身寄りの有無、同居状況
- 医療・判断能力情報
- 主治医、診断名、症状、意思疎通の可否、診断書取得の見通し
- 生活・福祉情報
- ADL/IADL、介護サービス利用状況、退院後の居所候補、支援歴
- 財産・収支情報(概況でよいが空欄は作らない)
- 収入源(年金等)、主な支出、負債・滞納、資産の種類(預貯金・不動産等)
- 親族・支援者・利害関係の状況
- 親族関係図、連絡可否、協力可否、対立の有無、キーパーソン不在の根拠
- 本人基本情報
- 連携を「役割分担」に落とし、分岐を先に決める
- 申立て主体の分岐
- 親族申立てが可能か/困難か
- 困難なら、市区町村長申立ての協議ルートを設定する(包括・福祉課等)。
- 後見人候補の見立て
- 親族後見が適切か、専門職後見が想定されるか(財産規模、対立、支援困難性)。
- 申立て前後の「空白」を埋める
- 退院期限までの支払い、入所申込、身元引受の実務、緊急連絡先
- 見守り・福祉サービスで繋ぐ部分と、後見開始を待つ部分を切り分ける。
- 申立て主体の分岐
まとめ(要点)
- 申立てを前に進める鍵は、「必要性(止まっている法律行為)」を明確化し、情報を申立て用に再構成することにある。
- 情報は「本人・医療・生活・財産・支援者」の5ブロックで欠落なく整える。
- 親族不在・機能不全の場合は、早期に行政接続(市区町村長申立て)と役割分担を確定し、申立て前後の空白工程を先に塞ぐ。