後見はいつ検討すべきか

判断能力の低下が疑われる場合に、成年後見制度を「いつ」検討すべきかは、年齢や診断名だけでは定まらない。
法制度上の基準は、本人が法律行為の内容を理解し自己の利益に沿って判断できるか、そして能力不足により具体的な不利益・危険が生じているかにある。
本記事は、法定後見と任意後見の検討開始時期を、利用者一般(おひとりさまを含む)として整理する。

目次

[0] 対象と前提

  • 対象は、認知症・知的障害・精神障害等により、金銭管理や契約行為に支障が生じている成年である。
  • おひとりさま等では、家族による早期の気づきが期待しにくく、銀行・医療・施設・不動産取引等の外部接触場面で問題が顕在化しやすい。

[1] 結論

成年後見制度(とくに法定後見)を検討すべきタイミングは、単なる物忘れや高齢化ではなく、「判断能力の低下により、預貯金の解約・払戻し、施設入所契約、不動産処分等の重要な法律行為が自力では遂行できず、生活維持や財産保全に具体的な不利益・危険が生じている段階」を基準とするのが制度構造に沿う。
他方、任意後見は契約であるため、本人が契約内容を理解し自らの意思で締結できる段階に限り検討可能であり、判断能力低下後は選択肢として利用できなくなる。

[2] 理由(法の論理)

  • 成年後見制度は、判断能力が不十分な成年の財産管理・身上保護を目的とするが、判断能力低下がある者に一律適用する仕組みではない。本人の自己決定を尊重しつつ、必要な範囲で法的保護を付与する建付けである。
  • 法定後見(後見・保佐・補助)は、判断能力の程度と必要な支援範囲に応じて類型化され、家庭裁判所は診断書等と生活・財産状況を踏まえ、具体的な法律行為の必要性(払戻し、処分、入所契約等)を基礎に必要かつ相当な範囲で開始を判断する運用となる。
  • 任意後見契約は、本人が契約内容を理解し意思表示できることを前提とする。したがって、軽度の段階は「法定後見を待つ期間」ではなく、任意後見や財産管理等委任契約など事前準備が可能な制度を選択できる期間として位置づけられる。

[3] 手順/フロー

  1. 事実の整理(トリガーの確認)
     - 金融機関で、本人の意思確認ができないとして解約・払戻し等の手続が進まない。
     - 不動産売却や定期預金解約等が必要だが、本人が内容を理解できず手続が停滞している。
     - 不要な契約の締結、説明を受けていない購入、出金の不明瞭化等により財産の散逸が疑われる。
  2. 代替手段の検討(負担の小さい手当ての有無)
     - 金融機関の代理人届出制度等で、当面の管理が確保できるか。
     - 社会福祉協議会等の日常生活自立支援事業で、日常的な支払い・管理が担保できるか。
     - 判断能力が一定程度残る場合、任意後見契約や財産管理等委任契約等の私法上の契約で対応できるか。
  3. 法定後見の検討開始(申立ての現実性を含めて判断)
     - 判断能力が不十分で、重要な法律行為の内容理解と自己の利益に沿った判断が困難である。
     - 重要手続(払戻し・処分・入所契約等)に関し、具体的な不利益・危険が生じている、又はそのおそれが高い。
     - 申立権者が不足する場合は、市区町村長申立ての可能性を含め、行政接続の可否を検討する。

[4] まとめ(要点)

  • 検討開始の基準は「年齢・診断名」ではなく、「法律行為が遂行できず具体的不利益・危険が生じているか」である。
  • 任意後見は「判断能力がある間」しか選択できないため、軽度段階が検討可能期間となる。
  • おひとりさま等では、外部接触場面で問題が顕在化しやすく、申立ての担い手不足を前提に行政接続の分岐も視野に入れる。

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