兄弟が疎遠なケースでは、制度論より先に「連絡」「同意」「代理」「費用」の詰まり所が出やすい。
本記事は、家族・支援者が実務で使う手続きと書類を、目的別に一覧化する。
目次
対象と前提
- 対象は、親の判断能力低下が疑われる、または備えを始めたい家族・支援者である。
- 兄弟姉妹の協力が得にくいことを前提に、「全員の合意がなくても止まりにくい」構造を優先する。
- 書類は、法的効力の強弱がある。目的に応じて使い分ける必要がある。
結論
兄弟疎遠ケースで実務上の効果が出る書類は、次の5ブロックに整理できる。
①連絡・情報の一本化 ②同意と意思の記録 ③平時の代理(委任) ④将来の代理(任意後見) ⑤判断能力低下後の公的手続き(法定後見)。
まずは①②で「揉めても止まらない最低限」を作り、次に③④で穴を塞ぎ、手遅れなら⑤へ移行する。
理由(法の論理)
- 成年後見制度は、判断能力低下後の財産管理・身上保護のための枠組みであり、家族の合意形成を代替しない。
- 委任・任意後見などの契約は、本人の意思能力が前提であり、準備できる時期に整備しないと選択肢が消える。
- 兄弟疎遠ケースでは、最初に止まるのは「誰が説明を受けるか」「誰が署名するか」「誰が支払うか」であり、書類はその詰まり所を迂回するために使う。
手順/フロー
- 目的を決めて、必要書類をブロックで揃える
連絡を通す/同意を取る/代理を作る/費用を回す/公的手続きへ移す、のどこが不足しているかを先に特定する。 - 平時に作れるものから整備する
本人の意思能力があるなら、委任・任意後見・各種同意書の順に整備し、疎遠兄弟の協力を前提にしない形へ寄せる。 - すでに止まっているなら法定後見の準備に入る
口座・不動産・施設契約が進まず生活が危うい場合は、家族内調整より家庭裁判所手続きへ寄せる。
まとめ(要点)
- 兄弟疎遠ケースは「連絡・同意・代理」の不足で止まる。書類はそこを迂回するために使う。
- まずは連絡と意思の記録、次に委任と任意後見、手遅れなら法定後見という順で組む。
- 死後は後見の外側であり、別枠の準備が必要である。
手続きと書類の一覧(連絡・同意・代理)
1)連絡・情報の一本化(窓口固定)
- 連絡先一覧(家族・医療・介護・金融・行政・近隣)
- 緊急時連絡カード(本人携帯用/冷蔵庫貼付用など、様式は任意)
- 情報共有ルールメモ(共有範囲、共有頻度、共有方法)
- 支援者同意の記録(兄弟全員でなくても、協力者だけで足りる範囲の確認)
2)同意と意思の記録(「言った/言わない」を潰す)
- 医療・介護に関する意思の整理文書(治療方針の希望、延命、連絡してよい相手等)
- 入院・手術等の説明同席者の指定メモ(法的代理ではないが実務で効く)
- 介護サービス利用の同意・希望の記録(ケアマネ面談時の合意形成を容易にする)
- 施設選択の希望・優先順位メモ(居住継続/転居の判断材料)
3)費用の回し方(立替・精算で揉めないための書類)
- 立替・精算の合意書(誰が立替えるか、上限、精算時期、領収書管理)
- 支出管理表(家計簿形式でよい。後日の説明責任に耐える)
- 領収書・契約書の保管ルール(紙/クラウド、保管場所、アクセス権)
4)平時の代理(判断能力がある間に動く契約)
- 財産管理等委任契約(支払い代行、口座管理、契約更新、各種解約等の範囲を明確化)
- 生活支援・事務委任契約(行政手続き、各種申請、郵便物管理などの事実行為中心)
- 見守り契約(安否確認、異変検知、緊急時の接続)
- 鍵・重要物の管理合意(鍵、印鑑、通帳、カード、暗証情報の管理方法)
5)将来の代理(判断能力低下に備える契約)
- 任意後見契約(公正証書)
- 任意後見の付随設計資料(支援内容、報告方法、費用負担、緊急時対応の方針)
- (必要に応じて)死後事務委任契約(葬儀、納骨、遺品、清算、連絡等)
- (必要に応じて)遺言(承継、死後の手配、連絡先指定等)
6)判断能力低下後の公的手続き(法定後見)
- 法定後見開始の申立書類一式(後見・保佐・補助)
- 医師の診断書(所定様式が使われることが多い)
- 事情説明書(生活状況、困りごと、申立てに至る経緯)
- 財産目録・収支状況資料(預貯金、不動産、年金、保険、負債等)
- 親族関係図・親族の意向確認資料(疎遠・対立を含め、裁判所が状況把握に使う)
- 申立権者が不足する場合の行政接続資料(市区町村との相談記録等)