家族が迷わないための初動チェックリスト

認知症が疑われた段階では、診断名の確定より先に「止まる手続き」と「事故リスク」が先に発生する。
初動でやるべきことは、医療・生活・財産を同時に深掘りすることではない。
まず、連絡系統と情報の入口を一本化し、手続き停止の芽を摘むことである。

目次

対象と前提

  • 対象は、親・配偶者・きょうだい等の判断力低下が疑われ、対応を迫られている家族である。
  • 目的は、本人の不利益(契約不能・支払不能・財産散逸)と家族の過重負担(情報探索・緊急対応の連鎖)を早期に抑えることにある。
  • 成年後見の検討は「初動の後」に置く。初動は事実確認と安全確保が中心である。

結論

家族の初動は、次の順で進めると迷いにくい。

  1. 連絡と権限の入口を整える(誰が動くかを決める)
  2. 事故・未払い・詐欺のリスクを止血する(生活と支払の安全確保)
  3. 「止まる手続き」を先読みして資料を集める(医療・介護・財産の最低限資料)
    この3段を終えると、任意後見・法定後見・委任・福祉サービスのどれに進むべきかの判断材料が揃う。

理由(法の論理)

  • 法制度は、本人の意思能力を前提に契約や処分を成立させるため、能力低下が疑われる局面では「本人名義の手続き」が止まりやすい。
  • 一方で、診断名の確定や後見申立ては時間を要し、初動の空白が不利益(未払い、口座凍結、入院・施設手続停滞)を生む。
  • したがって、初動は「制度選択」ではなく「事実と資料の整備」に比重を置くのが合理的である。

手順/フロー

  1. 24〜72時間でやること(緊急の止血)
  • 連絡系統を一本化する
    • 家族内の窓口担当を1人決める(電話・郵便・病院・ケアマネ対応を集約)
    • 緊急連絡先を共有する(本人、主治医、地域包括、ケアマネ、近隣)
  • 安全確認(生活事故の芽を潰す)
    • 転倒・火の不始末・徘徊・服薬ミス・運転の継続の有無を確認する
    • 必要なら運転停止、ガス・火器の安全対策、見守り頻度を上げる
  • 支払停止と詐欺リスクを止める
    • 不審な契約、訪問販売、電話勧誘、サブスクの増加、通帳紛失の兆候を確認する
    • 重要書類(通帳・カード・印鑑・保険証券)の所在を把握する(回収ではなく所在確認から)
  1. 1〜2週間でやること(「止まる手続き」の先回り)
  • 医療の情報をそろえる
    • 受診先(かかりつけ/物忘れ外来等)、服薬内容、診断書の要否を整理する
    • 入院・手術・施設検討の可能性があるなら、同意・支払・身元引受の論点を洗い出す
  • 介護の入口を作る
    • 地域包括支援センターに相談し、介護保険申請・ケアマネ接続の段取りを作る
    • 生活支援(配食・見守り・ヘルパー等)の候補を整理する
  • 財産の最低限の棚卸(深掘りしない)
    • 口座(主銀行1〜2行)、年金、保険、不動産の有無だけ先に把握する
    • 「近い将来必要になる行為」(払戻し/解約/売却/施設費支払)をメモする
  1. 分岐判断(制度に進む基準)
  • 本人が契約内容を理解し意思表示できる余地がある
    • 任意後見・財産管理等委任・見守り契約など「契約で先に権限を作る」ルートを検討する
  • すでに重要な法律行為が止まっている/財産散逸の危険が高い
    • 法定後見(後見・保佐・補助)の検討に進む
  • 親族が動けない/申立ての担い手がいない
    • 地域包括支援センター等を介して行政接続(市区町村長申立ての相談を含む)を検討する

まとめ(要点)

  • 初動は「制度の選択」ではなく「連絡一本化・止血・資料整備」を優先する。
  • 24〜72時間は安全と支払の事故を止める。1〜2週間で医療・介護・財産の入口資料を揃える。
  • その後に、本人の意思能力と手続停止の有無で、契約ルート(任意後見等)か裁判所ルート(法定後見等)へ分岐する。

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