兄弟が疎遠な状況では、家族内の合意形成を前提にすると手続きが止まりやすい。
本記事は、成年後見・委任・見守り等を「どの順で、何を誰が担うか」という支援モデルとして整理する。
目次
対象と前提
- 対象は、親の判断能力低下が疑われる、または備えを始めたい家族である。
- 兄弟姉妹の協力が得られない、連絡がつかない、意見が割れる状況を前提とする。
- 目標は「全員一致」ではなく、「生活と財産の停止を回避し、最低限の保護を成立させる」ことである。
結論
兄弟疎遠ケースの支援は、次の3層で組む。
①止まる点の先回り(連絡・支払い・契約の停止を防ぐ)
②代理権の確保(平時の委任→将来の任意後見)
③手遅れ時の公的移行(法定後見)。
家族の役割は「合意形成」ではなく、「事実の収集・窓口固定・公的手続きへの接続」に置く。
理由(法の論理)
- 成年後見制度は、本人の判断能力低下に対応する保護制度であり、家族の対立や疎遠を解消する仕組みではない。
- 私法上の契約(委任・任意後見)は本人の意思能力が前提であり、準備できる時期を逃すと選択肢が減る。
- 兄弟疎遠ケースでは、最初に止まるのは「誰が説明を受けるか」「誰が署名するか」「誰が支払うか」であるため、実務は代理・接続・記録の設計が中心となる。
手順/フロー
- まず「止まる点」を棚卸しする(家族の合意は後回し)
口座(払戻し・引落し)
住居(賃貸更新・退去)
医療(入院手続き・連絡先)
介護(サービス契約・施設入所)
重要契約(携帯・保険・公共料金)
どこが止まると生活が崩れるかを先に特定する。 - 「窓口」を固定し、記録を残す(連絡の一本化)
誰が外部対応の窓口になるかを決める。
兄弟全員の同意が取れなくても、連絡履歴・説明履歴・本人意思(確認できる範囲)を記録していく。
目的は、後に裁判所・行政・医療介護へ説明できる状態を作ることである。 - 判断能力がある間は「平時の委任」を優先する
生活費の支払い、契約更新、各種解約など、日常の止まり所を動かすには、財産管理等委任が実務で効く。
見守り(安否確認・異変検知)を併せ、止まりの早期発見と接続を確保する。 - 将来の分岐として「任意後見」を設計する
本人が契約内容を理解できる段階で、任意後見契約を公正証書で締結し、判断能力低下後の代理権を予約する。
任意後見は発動まで空白が出やすいため、平時の委任・見守りとセットで設計する。 - すでに止まっている場合は「法定後見」へ移行する
本人の判断能力が不十分で、口座払戻し・施設契約・不動産処分等が進まず生活に危険が出ているなら、法定後見の申立て準備に入る。
兄弟が疎遠で申立権者が機能しない場合は、行政接続(市区町村長申立ての検討を含む)に切り替える。
まとめ(要点)
- 兄弟疎遠ケースは「全員一致」を目標にすると止まりやすい。目的は停止回避と保護の成立である。
- 家族の役割は、合意形成よりも、窓口固定・記録・公的手続きへの接続に置く。
- 平時は委任と見守り、将来は任意後見、手遅れは法定後見という順で組む。