親族がいない、または親族が機能しない場合でも、成年後見の利用が不可能になるわけではない。
行政接続(市区町村長申立て等)を前提に情報を整流化し、申立ての必要性を「具体の法律行為が止まっている」という形で組み立てることで、後見開始まで到達できる。
目次
対象と前提
- 対象は、親族不在または親族が申立てに協力しない本人であり、医療・介護・住まい・支払いのいずれかが手続き停止しているケースである。
- 本ケースは、個別の事実を匿名化し、制度運用上の典型パターンとして整理したものである。
- 後見開始までに必要となるのは、親族の代替としての「申立て担い手の確保」と、家庭裁判所に提出するための情報整理である。
結論
親族不在ケースで後見開始まで到達するには、次の順で進める。
- 手続き停止の原因を「必要な法律行為が遂行不能」という形で確定する。
- 本人・医療・生活・財産・支援体制を、申立て用に欠落なく整流化する。
- 行政接続を確定し、市区町村長申立てのルートに乗せる。
- 後見開始までの空白期間を、福祉サービス等で暫定運用して埋める。
理由(法の論理)
- 法定後見は、判断能力が不十分となった本人について、家庭裁判所が後見人等を選任し、財産管理と身上保護の枠組みを与える制度である。
- 申立ては親族が担うことが多いが、親族がいない・機能しない場合に備え、行政による申立てが用意されている。
- 家庭裁判所の判断に必要なのは、診断書等による判断能力の資料と、後見が必要となる具体的事情(止まっている法律行為、生活・財産の危険)である。
手順/フロー
- 申立てが必要となる「止まり所」を確定する
- 生活の維持に直結する手続きが、本人の判断能力不足で進まない事実を整理する。
- 例:施設入所契約が締結できない
- 例:預貯金の払戻しができず支払いが滞る
- 例:医療・介護契約の同意や事務が停滞する
- 「物忘れ」「不安」ではなく、「必要な法律行為が遂行不能」を核にする。
- 生活の維持に直結する手続きが、本人の判断能力不足で進まない事実を整理する。
- 申立て情報を5ブロックで整流化する
- 本人情報:住所、生活歴、身寄りの有無、連絡可能者の有無
- 医療情報:主治医、診断名、意思疎通の程度、診断書取得見込み
- 生活情報:入院・退院調整の状況、居所候補、介護サービス利用状況
- 財産情報:収入源、支出、滞納の有無、預貯金・不動産等の概況
- 支援体制:包括・社協・病院等の関与状況、緊急連絡先の代替案
- 空欄を作らず、「不明なら不明」として調査課題に落とす。
- 行政接続を確定し、市区町村長申立てに乗せる
- 地域包括支援センターや担当課へ、親族不在であることと止まり所(必要性)を示して相談する。
- 行政側が求める資料(経過、医療情報、生活状況、財産概況、関係機関の見立て)を揃える。
- 申立てが決まるまでの連絡窓口を一本化し、追加照会への回答責任者を決める。
- 後見開始までの空白期間を埋める
- 支払い・契約・入所調整など、後見開始まで止められない工程を抽出する。
- 福祉サービスや既存の支援枠組みで暫定運用できる部分と、後見開始を待つ部分を切り分ける。
- 退院期限や入所期限など、期限のあるイベントを先に行政へ共有し、手続き優先順位を固定する。
まとめ(要点)
- 親族不在でも、行政接続により後見開始まで到達できる。
- 成否を分けるのは、必要性を「止まっている法律行為」として確定し、申立て資料を欠落なく整えることにある。
- 行政接続を早期に確定し、後見開始までの空白期間を暫定運用で埋める設計が必要である。