家族が成年後見を検討する場面で最初に迷うのは、「何から着手し、どの制度へ分岐するか」である。
本記事は、法制度の構造に沿って、家族が最初に判断すべき分岐ポイントを整理する。
目次
対象と前提
- 対象は、判断能力の低下が疑われる本人を支える家族(40〜70代を中心)である。
- ここでいう「分岐」とは、任意後見(事前設計)か法定後見(事後保護)か、または後見以外の手段で足りるかの切り分けを指す。
- 医学的診断名だけでは分岐は決まらず、法制度上は「法律行為を理解し判断できるか」と「具体的な必要性」が基準になる。
- 家族が判断するのは診断ではなく、制度上の入口条件(契約可能性/申立て必要性)である。
結論
家族が最初に判断すべき分岐ポイントは次の3点である。
- 本人が「契約」を理解して結べる状態か(任意後見・委任等が可能か)
- いま「止まっている手続き」があるか(預貯金・施設契約・不動産等の具体的必要性)
- 申立て・支援の担い手がいるか(親族申立てが可能か/行政接続が必要か)
この3点で、任意後見(事前設計)・法定後見(申立て)・代替手段(当面の支払い確保等)の進路が決まる。
理由(法の論理)
- 任意後見は契約であるため、本人に契約内容の理解と意思表示が求められ、判断能力低下後は新規締結が困難になる。
- 法定後見は、判断能力が不十分となった後に家庭裁判所が介入する制度であり、開始には「必要性」(法律行為が遂行できず不利益が生じる等)が前提となる。
- 後見類型(後見・保佐・補助)は、本人の判断能力の程度と支援の必要範囲に応じて裁判所が決定するため、家族側は「能力の程度」と「困りごとの具体性」を材料として整理する必要がある。
手順/フロー
- 分岐点①:本人が「契約」を結べるかを確認する
- 本人が、任意後見や財産管理等委任の内容を理解し、説明を受けて意思決定できるかを確認する。
- 目安は「重要な契約の意味を理解し、自分の利益に沿って選べるか」である。
- 可能であれば、任意後見(将来)と委任等(平時)を組み合わせた事前設計が選択肢となる。
- 分岐点②:「止まっている手続き」が既にあるかを確認する
- 次のような出来事がある場合、法定後見の必要性が高まりやすい。
- 金融機関で本人の意思確認ができず、払戻し・解約が進まない。
- 施設入所契約や介護契約が、本人の理解不足で締結できない。
- 不動産の処分や重要な契約が必要だが、本人が内容を理解できない。
- 不要契約の締結や不明出金など、財産散逸の危険が現実化している。
- 「年齢」「診断名」ではなく「法律行為の停止」が制度上のトリガーになりやすい。
- 次のような出来事がある場合、法定後見の必要性が高まりやすい。
- 分岐点③:申立て・支援の担い手を確定する
- 親族が申立てを担えるか(関係性、距離、協力可能性)を整理する。
- 担い手が不在・機能しない場合は、地域包括支援センター等を通じて行政接続を検討し、市区町村長申立ての要否を協議する。
- 担い手の状況は、制度選択だけでなく、運用(連絡・書類収集・生活支援の連携)にも影響する。
まとめ(要点)
- 最初の分岐は「本人が契約できるか」であり、できる間は事前設計(任意後見・委任等)の余地がある。
- 次の分岐は「止まっている手続きの有無」であり、具体的な法律行為の停止が法定後見検討の起点となる。
- もう一つの分岐は「担い手の有無」であり、担い手不在の場合は行政接続を含む運用設計が必要となる。