判断能力低下前の契約整備

判断能力の低下に備える方法は「成年後見」だけではない。
判断能力がある間に、契約と文書で役割分担を先に確定しておくことで、口座・支払い・施設契約などが止まる局面を減らせる。

目次

対象と前提

  • 対象は、将来の判断能力低下に備えたい本人および家族・支援者である。
  • 多くの備えは「判断能力がある間にしか新規で作れない」。低下後は選択肢が狭まり、時間と費用が増えやすい。
  • 備えの論点は「平時に回す仕組み」「低下後の法的代理」「異変検知と接続」「死後の空白」に分解できる。

結論

判断能力低下前の備えは、次の二層で設計する。

  • 平時に効く契約で、支払い・手続き停止を先に塞ぐ。
  • 低下後に効く制度で、法的代理が必要な局面に備える。

中核となるパーツは「財産管理等委任(平時)」と「任意後見(将来)」である。
見守り・連絡は接続機能として補完し、死後は死後事務委任・遺言等で別枠に設計する。

理由(法の論理)

  • 契約(委任等)は本人が内容を理解し意思決定できることが前提であり、判断能力が低下すると新規締結が困難または不能になりやすい。
  • 法定後見は判断能力低下後の保護制度であるが、開始には家庭裁判所手続きが必要で、日常の支払い・解約・届出の停止を即時に埋める仕組みではない。
  • 任意後見は事前に設計できるが、効力は監督人選任後に発生する構造であり、平時の支払い・手続きは別契約でカバーする必要がある。
  • 後見等の任務は本人死亡で終了するため、死後の事務は後見の射程外である。

手順/フロー

  1. 生活の「止まり所」を棚卸しする
  1. 口座(入出金・引落し)
  2. 住居(賃貸・修繕・更新)
  3. 医療・介護(入院手続き、施設入所契約、支払い)
  4. 重要契約(携帯・保険・公共料金・サブスク等)
  5. 緊急連絡(誰が発見し、どこへ繋ぐか)

  1. 二層に切り分ける
  1. 平時に回す仕組み:支払い・手続きの代行=財産管理等委任
  2. 低下後の法的代理:任意後見(間に合わない場合は法定後見)

  1. パーツを組み合わせて最小構成を作る
  1. 財産管理等委任:支払い・解約・届出の範囲、管理方法、報告方法を決める。
  2. 任意後見:誰に、何を、どこまで任せるかを設計し、公正証書で契約する。
  3. 見守り・連絡:頻度、異変時の判断基準、接続先を決める。
  4. 医療・介護の意思整理:希望と連絡先を文書化する。
  5. 死後事務・承継:葬儀・納骨・遺品・支払い・連絡を誰が担うかを別枠で決める。

まとめ(要点)

  • 備えは「契約で平時を回す」と「制度で低下後に備える」の二層で考える。
  • 中核は財産管理等委任(平時)と任意後見(将来)である。
  • 見守りは代理権ではなく接続機能であり、実務上の重要度が高い。
  • 後見は死亡で終了するため、死後は別枠で設計する。

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