認知症初期に本人がすべき準備5点(判断能力がある間の手続)

認知症初期は、日常生活が回っていても契約判断が揺らぎ始める時期である。
法制度上は、判断能力が残っている間にしか締結できない契約や、後から代替しにくい手続が存在する。
本記事は、判断能力が保たれている段階で優先すべき準備を5点に整理する。

目次

対象と前提

  • 対象は、認知症の初期段階にあり、原則として本人が契約内容を理解し意思決定できる状態にある成年である。
  • 前提として、判断能力が低下すると「本人が契約主体となる準備」ができなくなる領域がある(任意後見、委任契約、遺言等)。
  • 本記事は医療判断ではなく、法制度と手続の観点から「今やるべき準備」を扱う。

結論

認知症初期に本人がすべき準備は、次の5点である。
①判断能力の裏付けを残す(診断書・受診状況の整理)
②緊急時の連絡・同席者を定める(連絡先リストと同意形成)
③日常の財産管理を分離する(支払・口座・カードの整理と権限付与)
④将来の代理の枠組みを設計する(任意後見・財産管理等委任の検討)
⑤死後の空白を埋める(遺言・死後事務委任等の整備)

理由(法の論理)

  • 私法秩序は本人の自己決定を前提とし、契約は本人が内容を理解して意思表示できることを基礎に成立する。判断能力が低下すると、この前提が満たせず、準備できる手段が限定される。
  • 成年後見制度は判断能力低下後の保護(法定後見)と、判断能力がある間の事前設計(任意後見)に分かれる。任意後見は事前にしか組めず、後から取り戻せない分岐である。
  • 死後の事務は後見制度の射程外であり、死亡により後見の任務は終了する。よって、死後の手当は別の法的手段で先に設計する必要がある。

手順/フロー

  1. 判断能力が残る間に「後から作れないもの」を優先順位付けする
     - 任意後見契約(将来の代理)
     - 財産管理等委任契約(当面の管理の委任)
     - 遺言(相続の指定)
     - 死後事務委任契約(死後の実務)
  2. 生活と財産の“事故ポイント”を減らすための整理を行う
     - 支払方法の一本化(公共料金・家賃・施設費等)
    • 重要書類の所在の固定(通帳・印鑑・保険証券・不動産関係)
    • 不要契約の棚卸し(サブスク・訪問販売・高額商材等)
  3. 将来の支援ルートを確保する
     - 緊急連絡先と支援者(親族・支援者・関係機関)を明確化する
     - 判断能力が低下した場合の分岐を決める(任意後見の発動/法定後見申立て/行政接続)

まとめ(要点)

  • 認知症初期は「判断能力があるうちにしかできない準備」を先に片付ける段階である。
  • 準備は、証拠(能力の裏付け)→生活と財産の事故防止→代理の設計→死後の空白の順で組み立てる。
  • 後見制度だけでは死後はカバーされないため、遺言・死後事務委任等を別枠で整備する。

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