兄弟が疎遠な状況では、支援の「合意形成」より先に、連絡経路・決定者・費用負担の設計が止まりやすい。
本記事は、後見・任意後見・委任・見守り等を「役割分担の設計図」として整理し、家族が迷わず動ける全体像を示す。
目次
対象と前提
- 対象は、親の判断能力低下が疑われる、または今後に備えたい家族である。
- 兄弟姉妹間の関係が疎遠・対立・遠方で、共同対応が期待しにくい状況を前提とする。
- 制度は「仲直りの道具」ではない。支援の目的は、生活と財産が止まらない構造を作ることにある。
結論
兄弟が疎遠なケースでは、支援は次の順序で設計すると止まりにくい。
①連絡と情報の一本化(窓口の固定)→②費用と支払いのルール化→③平時に動く委任で穴埋め→④将来の法的代理を任意後見で予約→⑤判断能力低下後は法定後見で公的枠組みに移す。
あわせて、死後は後見の対象外であるため、死後事務・承継は別枠で準備する。
理由(法の論理)
- 成年後見制度は、判断能力が不十分な者の財産管理・身上保護を目的とする制度であり、親族関係の調整や合意形成を目的としない。
- 任意後見や各種委任契約は、本人が契約内容を理解して意思表示できることが前提であり、判断能力低下後は新規設計が困難になる。
- 兄弟が疎遠な場合、実務上の停滞点は「誰が決めるか」よりも先に「誰が連絡を受け、誰が支払いを回すか」に集中する。ここを契約・制度で代替できる。
手順/フロー
- 支援の論点を4つに分解する
生活:施設・介護・入院・契約更新など
財産:口座・支払い・解約・売却など
連絡:緊急連絡・情報共有・本人の状況把握
死後:葬儀・納骨・遺品・清算・連絡 - 家族の役割分担を「合意」ではなく「固定」で決める
窓口(連絡・資料の集約役)を1人に固定する
支払いの一次責任者を1人に固定する(立替・精算ルールも先に決める)
反対・非協力が出ても止まらない代替ルート(専門職・行政接続)を確保する - 制度を時間軸で配置する
平時に動く:財産管理等委任・見守り・各種同意書や連絡体制
将来に備える:任意後見(公正証書)+必要に応じて信託等の財産枠組み
すでに困難が発生:法定後見(後見・保佐・補助)を検討し、申立ての担い手が不足する場合は市区町村長申立て等の行政接続も視野に入れる
まとめ(要点)
- 兄弟が疎遠なケースの本質は「支援の担い手不足」であり、合意形成より先に連絡・支払い・決裁の構造が止まる。
- 解決は、人間関係の修復ではなく、役割分担と制度配置(平時の委任/将来の任意後見/事後の法定後見)で行う。
- 後見は死亡で終了するため、死後事務・承継は別枠で準備する。